令和3年度国立大学法人佐賀大学学位記授与式式辞
今日,ここに,学位を授与された1,616名の卒業生,修了生の皆さん,佐賀大学を代表して心からお祝を申し上げます。おめでとうございます。卒業・修了の日を迎えることになった皆さんは,入学以来,真摯に勉学に励み,様々な困難に打ち克ち,本日学位を授与されました。また,遠く母国を離れ,本学で学んだ留学生の皆さんは,言葉や習慣の異なった困難な環境の中で研鑽を積み,見事学位を取得されました。このことに心からの敬意を表します。
そして,今日この日を迎えるに当たり,物心両面から支えてこられたご家族の皆様,同窓会をはじめ,ご支援いただいた全ての皆様に,心よりお祝いとお礼を申し上げます。 本日は新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえ,このような形で学位記授与式を挙行することとしました。本来であれば,家族や後輩達と喜びを分かち合い,大学生活の節目を共に祝福したかったと思いますが,皆さんの,そしてご家族の皆様の健康を第一に考えてのこととご理解いただきたいと思います。
さて,これから皆さんは,それぞれが選んだ新たな道に進みます。新しい環境の中で,新しい出会いや仕事に打ち込むことに胸をはずませていることでしょう。現代社会は,デジタルトランスフォーメーション(DX)といった科学技術,特にデジタルサイエンスの目覚ましい発展とともに,SDGs,カーボンニュートラル,少子高齢化による労働力人口の減少,グローバル化の進展,新型コロナウイルス感染症の流行を契機としたニューノーマル時代の到来といったものを背景として,皆さんの生活様式や行動様式に著しい変化が生じる,予測困難な時代を迎えようとしています。
ここで社会に羽ばたいてゆく皆さんに伝えたいことが三つあります。
1.目の前にある課題を一つずつ
一つ目は,やるべき一つ一つのことに懸命に取り組むことの大切さを改めて知って欲しいということです。
皆さんが想像している以上に社会には厳しさ,困難さが待ち受けています。日々の暮らしの中で厳しさ,困難さに直面して失敗や挫折,後悔を経験することもあるでしょう。その時に皆さんには何ができるのか。それは目の前の事柄に向き合い,努力を続けることです。何も大きなプロジェクトや事業を成功させるような壮大なものではなく,自分に求められている,目の前にある仕事や課題を着実にこなしていくということです。日々の小さな努力を積み重ねる姿勢は,周囲の共感や協力を生み,少しずつかもしれませんが困難な状況をも好転させてくれるでしょう。そうして,一歩ずつですが,確かな成長を遂げ,その成長を基礎として,未来への新たな道が拓かれます。また,そのことを通じて失敗,挫折,後悔の日々だった過去さえも,自分が成長するために必要なものであったと受け入れることができるようになるでしょう。
2.物事を別の視点からも見てみる
二つ目は,物事を別の視点からも見てみる,ということです。
社会に出ると,皆さんはこれまで以上に自分とは違う考え,時には受け入れがたい考えなどに多く接することでしょう。
人(ひと)は,ややもすれば,自分の考えを他人に押し付けがちで,他者と協働することは難しいものです。皆さんは自分の考えに基づいて物事を見ていますが,社会は様々な人や文化,制度などの要素が相互に影響し合って成り立っています。そのため,物事を自分だけの考え,すなわち一方的な見方だけをしていても上手くはいきません。
相手の立場に立って物事を見ると,全く別の見え方をするかもしれません。多くの経験を通して人と関わり,相手との信頼関係を築く努力をする中で,自らの中に多様性や包摂性を育み,見方を変えることで,物事の別の価値観を理解し,視野が広がることでしょう。視野の広がりは,皆さんの行動を変え,ひいては本当の意味で他者との関わりや協働を実現してくれます。
3.強く,優しい人間になるために
三つ目は,感謝の気持ちと思いやりの心を持つことです。今こうして社会人としてのスタートラインに立つことができるのは,皆さん一人ひとりの努力もさることながら,周囲の人達の支え,励ましがあったからこそです。家族,友人,教職員,同窓会,地域社会。様々な人達が皆さんの支えとなってくれています。その方々への感謝の気持ちを忘れないようにして下さい。そして,社会人として,これから日々成長していく過程では,その成長を自分のためだけではなく周りの人達へも向け,今以上に強く,優しい人間になって下さい。
「志,挑戦,そして未来へ」
佐賀大学で過ごした日々は皆さんにとって,かけがえのない財産です。佐賀大学で培った力,得られた経験,友人,恩師や職員との出会いと繋がりを大切にして,未来へ向けて着実に歩みを進めて下さい。
最後に,私は皆さんの門出に当たり「志,挑戦,そして未来へ」という言葉を贈ります。“今”この瞬間を大切にして,志をもって挑戦を続けて下さい。そして,皆さんが真の社会人へと成長して,思い描いている未来で大きく羽ばたき,活躍することを祈念して学位授与の式辞とします。
令和4年3月23日
国立大学法人佐賀大学長 兒玉 浩明